砂漠の街に
砂漠の町に住む僕らは、毎日心の水分を持っていかれる。
働いても働いても、喉が渇くばかりだ。
カサカサの肌と、カラカラの喉。
いつ潤うかもわからない。
目の前にはオアシスの蜃気楼が見えるのに
手を伸ばしても、走ってそこに行ったとしても
もうそこには水はないのだから。
水の音が聞こえてくる。
幻聴だと思っていても、ついそこに足を向けてしまう。
そこに水があれば良いな。って。。
僕はやっとたどり着いた乾いた井戸の底で声を聞いたの。
歌うような、囁くような不思議な声を。
『ねぇねぇ。何してるの?』
君を探しているんだよ。ずっと前から。。
『おかしなことを言うのね。わたしはずっといるよ。』
その瞬間、乾いた井戸の底にいたのに
そこは水と光に包まれた海の底に代わっていたんだ。
あれ?僕はいったい何をしていたんだ?
砂漠の町で乾いて干からびていたはずなのに。
すると、フワリフワリと君がやってきて
『やっと会えたね。ねね、ギュってして💛』
ダメだよ。僕はトゲトゲだから君を傷つけてしまうよ。
『いいの。あなたなら大丈夫なの。
それに、あなたはトゲトゲじゃないよ。
わたしにはフワフワして見えるんだもん。』
ホントかな?誰も僕に近寄ろうともしなかったのに。。。
僕は喉が渇いて死にそうだったんだ。
『そうなの?大変だったね♪今はどうなの?』
もう~、他人事だなぁ。。。今は、、、あれ?
僕は君の世界にいるじゃない。
ここでは喉が乾くことはないよ。
『んじゃ、良かったね♪』
君はいつもフワフワだね。
君と君の世界にずっといさせてよ。
ここなら僕は永遠に乾くことはないんだ。
『良いわよ。でも、ひとつ条件があるの。』
なんだい?なんでも聞くよ。教えてよ。
『ダメ。今は言えない。でも、、、守ってね。』
わかったような、わからないような顔をしていたのだけど、、
僕はその約束をした。
それから、何十年も僕らはいろんな場所にデートしたりして
共に楽しい時間をずっと過ごしたのだけど、。。。
僕らは年を取って、、、君が死ぬときに言ったの。
『ありがとう。最後まで条件を守ってくれて。
わたし、幸せだったわ。』
ダメだよ。僕をまた一人にしないでよ。
君はにっこり微笑んでこう言ったの。
『あの時の条件は、、、これだったの。。。』
『わたし寂しがりだから、、、わたしより一日でも長生きしてね。。。』って。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。